BATTLE ROYALE 外伝

第一部
試合開始



11

  物静かな島・・・。時々聞こえてくる、風の音。一は、一軒の集落に居た。ここなら少しは落ち着ける・・・だろう。 恐怖に脅かされる少年が流す汗は、なんの躊躇いもなく地面に滴り落ちる。
 既に時計の針は、午前1時を回ろうとしていた。――――今ごろ家族は寝てるのだろうか?それとも自分のために泣いているのだろうか。 ああ、家に帰りたい――――家族に恨みはなかった。このゲームは、政府が決めたものだから・・・。中学3年生がやるプログラムだから・・・。 時間が経つごとにため息の数が増えていた。その時だった、あの殺人教師の声が島に響き渡った。
 「・・・あ、ああ〜、ですです・・・・。おっす!オラ鬼月!みんな元気にやってるか〜?ただいま一時になりました。死んだ人を発表するぞ〜。 え〜、まずは・・・」
 し、死んだ人間がいるのか!?まさか・・・まだ1,2時間しか経ってないはずだ・・・。一の額からは、ふつふつと汗が噴き出していた。
 「女子の部は、一番石上晴香六番小見有紀。続いて男子の部、十九番村瀬淳也、以上3名。そして今から禁止エリアの発表をするから、 支給されたデイパックの中から地図を出して確認しろよ〜いいな〜、分からない人は、そのまま分からず死んでくれ。よーし言うぞ。 午前二時からH=9、午前四時からD=1、午前六時からC=10だ。ちっ、なんだ、ハズレばっかだな。まあいい、お前達のグレイトな 殺し合いを俺は期待してるからな〜、いいか、殺らなきゃ殺られるぞ!・・・・じゃあまたな」
 石上に、小見!?それに、淳也までもが・・・。そ、そんな。死んだのか・・・もう、もうこの世には居ないって事か?うそだろ?早すぎやしないか? やはりこのゲームに乗った奴が何人も居るのか。 一は思い出した様に急いで地図を取り出し、ポケットにしまってあった赤鉛筆で、禁止エリアに横線を入れた。鬼月が放送で言った禁止エリアは、 すべて海や島の端だった。しかしなんであんなに鬼月はテンションが高いんだ。グレイトな殺し合いだと?ふざけるな・・・ちくしょう! 毎日あんな放送を聞かなければならないのか・・・。
 既に殺し合い(ゲーム)は始まってるんだ。一は、肩に掛けていたライフル銃「ファマス5」を、顔の前まで持っていき、 虚ろな目で見つめた。俺はクラスメイトを殺すのか・・・。いや、俺は参加しない。人間として間違っている。絶対。一度や二度、 テレビでこのゲームを知った時は、このゲームに興味をもった事はあった。 しかしそれはただの興味本位に過ぎない。ちくしょう!俺一人ではだめだ。樹、敬二、武藤、孝明。この四人の誰でもいいから会わないと、 自分の自我が抑えられなくなりそうで一は怖かった。
 そう、目的は殺し合いではない。この島から脱出する事だ。みんなを説得しなくては・・・でもその方法が 一には分からなかった。今や、初めての体験ばかりで、何がなんだかわからない状態であった。――――優司先生の生首、阿藤健二の流血―――― この世の一番怖い物を見たような、一にはそんな体験だった。
 自分が持ってきた荷物を地面に置くと、中から一冊の表紙がブルーのしおりを出した。それは修学旅行の行動などが書いてあるしおりだった。班で行動し、いろいろな観光名所に行き、 夜はホテルでクラスメイトと遅くまで長話、始めから終わりまでクラスメイトと一緒。楽しい思い出はできたかな?小学校なら先生は こう言っただろう。校庭が見え、教室が見え、自分の学校が見え、淳也の死体・・・!そう、自分は今、戦場にいたんだ。銃声が飛び交い、震えてる人間がいて、 凶器を持った人間もいる。ちくしょう!くそったれ!
 しかしここでじっとしている訳にもいかない。行動を起こさないと何にも始まらないし、解決だってしない。
 一はデイパックから水を取り出すと、キャップを開け一口水を含み、荷物一式とファマス5を持ち、家の玄関から出て行った。地面には 一冊のしおりを残して・・・。

【残り35人】




次へ

トップへ