BATTLE ROYALE 外伝

第一部
試合開始



  「ガヤガヤ・・・ガヤガヤ・・・」
 やっぱり修学旅行だからみんなはしゃいでるな〜。そんな事を、クラスの学級委員 本城一(香川県善通寺第四中学三年E組男子十五番)は思っていた。
 一はみんながどんな行動をしているかは分からなかった。
 そう、修学旅行の目的地に着く前に眠ってしまったからである。そして今、目を閉じたまま一はみんなの声を聞いていた。
 「まさか・・・」
 「冗談だよ」
 「だったら何で私達はココにいるのよ」
 「ガヤガヤ・・・うそ・・・でしょ?・・・私達?・・・」
 だが次の瞬間、一の耳に、一瞬で体が凍りつく言葉を発した女子がいた。
 「わ、私達、あの殺人ゲームの対象クラスに選ばれたの?」
 なに?今なんと・・・・。殺人ゲーム?ゲーム?え?
 一は目を開いた。その時一の目に映った光景は、楽しい修学旅行から、古臭い学校の教室の中にタイムスリップしていた。なぜか 自分が通う学校の教室ではない事はわかった。「は?」と、思わず声を あげる一は、さっきの言葉が聞こえた方を見た。
 そう、それは吹奏楽部に入っていて、クラスの中でもよく喋る、小見有紀(女子六番)その女だった。そこから、有紀の周りで座ってる女子が次々に悲鳴をあげていた。
 一はその言葉にも驚いたが、1番驚いたのはここが何処かって事だった。教室の中は生徒全員が誰かに 監禁されたように雰囲気は最悪だった。それから一は自分の頭の中を整理してみた。
 まず修学旅行のバスに乗っていて、それから、楽しく雑談をみんなでして、それでなんだか眠たくなってきて・・・・ん?
 一は気づいた。なぜ急に眠った?本を読んでいたわけでもない・・・。。 おかしい。俺は何時眠ったのだろうと・・・。
 そして、首には変な首輪が巻かれているのに気づいた。気づいてる周りのクラスメイトは、お互いに首輪を見てみたり、撫でる様に 触りながら蒼ざめた顔をした奴もいた。首輪は ぴっちり一の首に巻き付いており、ひんやりと冷たかった。周りにいたクラスメイトの首を確認すると、見た限り全員の首にソレがしてあった。銀色に輝くその首輪は、 残酷な何かを物語ってるようだった。
 一は今いる教室をじっと舐め回すように見た。
 木の机、木の椅子、木の壁。材木でできてる教室。しかし黒板の前には鉄でできた長机とパイプ椅子があった。
 やはり、ここが何処か見渡した所で分からない。ただ、その時なぜかみんなの顔を一は見ていた。
 これから授業があるかのように、一を含むクラスの全員が椅子に座っていた。よく見ると、出席番号順にみんな座っていた。
 まず一の目に入ってきた人物は、野球部に入っていて鋭い勘の持ち主の、野乃久敬二(男子十四番)だった。一からは敬二の後ろ姿しか見れないが、敬二はぶるぶる小刻み に震えていた。
 その次に一は前の方を探しながら、クラスで1番仲がいい、頭の回転がずば抜けて良く、敬二と同じぐらい頼れる存在。  そして一と同じバレー部の天才レシーバーと呼ばれた男――――影野樹(男子四番)を見た。  一が座ってる席からは少し遠かったが、何をしてるかは分かった。 樹は腕を組んで下を向いていた。まるで、全て分かってる様な・・・。
 一人だけ女子の悲鳴に混じって、怒った声で叫ぶ男子がいた。それが、一の2つ隣に座っているクラスの中でも明るく、誰にも気さくに話し掛け、  何よりも活発な男――――村瀬淳也(男子十九番)だった。 なんだか拳を机に叩きながら「くそっ!くそっ!」と言うのを怒り狂った顔で連発していた。よっぽどの事がないと 村瀬淳也という男があんな顔する時はめったに無い。正義感が強く、やさしく、何でも自分のせいだと思ってしまう所がたまにキズで、 よく女子の不良に悪い事やパシリをさせられていた事は有名な話だった。
 一はまだ、これは本当に現実なのか・・・と思っていた。夢から覚めたら目の前に教室とクラスメイト。プログラムに選ばれたと誰かが言い、 ザワザワ騒いでいる。自分が今どんな立場に立ってるのか全く分からなかった。もしかしたらまだ半分夢の中にいるのかも知れない。 そうなら、早く覚めて欲しい。覚めたら隣に同じ班の樹が居て「起きたのか?随分うなされていたな・・・」なんて言葉が待ってることだろう・・・夢なら・・・。 いや、夢に間違いない。こんな薄暗い古臭い教室が何処にある?――――ああ、これが夢でありますように――――起きれば樹の声と、バスの走る音が聞こえるだろうな。 今目覚めれば何時ぐらいだろう?昨日十分に睡眠をとったんだ。きっと自分が眠ってしまったぐらいだから、11時か12時そこらだろう。バスの揺れにはやはり勝てない。 目覚めればそこは楽しい楽しい修学旅行だ!きっとこの夢は、ウキウキ気分の俺の脳みそがやきもちを妬いて作った夢なんだ。
 しかし、次第に一は夢じゃないかもという思いが強くなっていた。それは教室のドア付近の一人の生徒が「誰か来る!」と言ったからだった。

【残り39人】




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